PXL_20220802_045646123.PORTRAIT
 

「茶粥の記」矢田津世子

清子と姑(はは)の郷里は同じ秋田のようだ。清子は良人(おっと)と姑との三人暮らしだったが、良人が急性肺炎でなくなり、二人は遺骨と共に帰郷することになった。

良人は、雑誌に記事まで書くほど食べ物に詳しかった。清子はそんな良人のことを回想する。茶粥を始めたくさんの美味しいものが登場し読者を楽しませる。ほのぼのとした清子と姑の関係が何ともいい。

 

「万年青」矢田津世子

福子は親類みんなから「可愛い嫁さん!」と親しまれおり、本家の隠居も彼女のことを自慢していた。

隠居は福子の良人(おっと)の祖母にあたる。隠居は隠居後も采配を振るっており、孫嫁たちは隠居の寵を得ようと一所懸命だったが、福子の隠居に対する気持ちは他と少し違っていた。

福子の人となりが滲み出る文章が秀逸である。

 

「茶人」藤沢桓夫

七宮七兵衛は、一代で財をなした希代の吝嗇家(りんしょくか)だった。つまり「けちんぼ」である。七兵衛は月に一度順番で開かれる茶会に招かれるものの、自家に人を招くことはなかった。そんな七兵衛が催促されて茶会を開いたのだが、それは実に珍妙なものだった。

資産家の吝嗇。現代でも通ずる話である。

 

「鱧の皮」上司小剣

ある日、讃岐屋のお文の元に家出した夫から無心の手紙が届く。興行好きが借金を重ねた結果らしい。タイトル「鱧の皮」にはそんな夫に対する情が込められており、それが終末と見事に呼応している。

千日前、法善寺裏の路次、善哉屋横のおかめ人形など、大阪の情緒が写実的に描かれていて味わい深い。
 

(049)膳 (百年文庫)

新品価格
¥825から
(2022/8/2 14:12時点)